産後けんしょう炎

産後けんしょう炎の予防に向けた研究の取り組みのご紹介

 10数年前に乳児の母親に手や手首の痛みを訴える人が多いことに気づきました。昔はあまり手や手首の痛みについて聞いたことがなく不思議に思いました。携帯電話などのモバイル機器が普及していたので、その影響を疑ったほどです。2010年に簡単な調査を行ったところ、産後1、2か月頃に痛みを訴える人が増えることが明らかになりました。この結果を一般化できるのであれば、産後の手や手首の痛みに悩む人が年間38万人近くいると推定され、改めてケアの必要性を認識しました。
 それから、産後けんしょう炎の研究が始まりました。ここでは産後にみられるドケルバンけんしょう炎のことを「産後けんしょう炎」と呼ぶことにします。
 ドケルバンけんしょう炎は男性に比べて女性に多くみられ、妊娠出産期や更年期の女性に多く、手の使いすぎやホルモンとの関連が指摘されています。

 

産後けんしょう炎の研究成果の一部をQ&A形式でご紹介します。

産後の手と手首の痛みの状況は?

 痛みがある人の割合は、産後5日が12%、2か月が41%、6か月でも23%でした。
痛みは数か月内に落ち着く人もいますが、再発する人も多く、なかには産後9か月まで続いている人もいました。

 

手と手首の痛みを伴う育児動作は何ですか?

 産後2か月に、育児中に痛みを感じた人の割合は60%でした。抱っこが54%と最も多く、次いで授乳25%、寝かしつけ(抱っこ)13%、沐浴12%、おむつ交換4%の順番でした。
なかには、抱っこや沐浴のときにあかちゃんを落とした人もいました。

 

痛みは、日常生活の何に影響しますか?

 産後2か月では、蛇口をひねる、タオルをかたく絞る、リンゴの皮をむく、重いドアを押し開ける、重いものを持ち上げる、力仕事などに影響していました。症状がひどい人は何をしても痛いと言い、買い物で商品を落としてしまい落ち込んだ人もいました。
そこで産後の女性の握力、つまむ力を測定したところ、高齢女性並みに低下していることが明らかになりました。

 

どのような自己対処をしているのか?

 63%は何もしていませんでした。対処したとしても湿布をはる18%、サポーター7%でした。病院を受診した人は4.8%でした。受診が少ない理由には、子ども同伴での受診の難しさが影響していました。

 

産後けんしょう炎の情報はどれ位いきわたっているのか?

 情報があったと回答した人は11%でした。80%は情報不足/無かったと回答しました。「事前に知識や情報があれば、予防もでき、対策もすぐに行えたのかな」「産後の手、手首の痛みが改善されるようなマッサージや痛みが起こりにくい育児方法などを知ることができたらいいと思います」などの意見がありました。

 

パパ

赤ちゃんだっこ

手が痛い

良いだっこ

 

 

2019年4月に、産後けんしょう炎のお役立ち資料として,育児期の母親の産後けんしょう炎を予防するための自己検診法と教育プログラム(e-learning)を公開しました。ご活用いただけましたら幸いです。

 

本研究は、科学研究費助成事業の助成金を受けて実施しました。

・2012年度~2015年度、挑戦的萌芽研究「産後腱鞘炎の機能評価尺度と看護プログラムの開発 ― 育児動作解析を含む質的・量的検討 ―」

・2016年度~2018年度、基盤研究(B)「育児期の母親の産後腱鞘炎を予防するための自己検診法と教育プログラムの配信システム」

 

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